追いかけっこ:フォルス

フォルス

「ふあ‥‥‥あふう こんな時間に起きると、さすがに眠いな」
「二度寝したいところだけど、そういうわけにもいかないかな」
「ちょっと、目を覚ましに行ってくるか‥‥‥」

「おおー‥‥‥こりゃ、いい眺めだ」
「そういえば、こんな時間にここに来たことはなかったっけな」
「ちょっと時間を変えただけなのに、見慣れた光景が、新鮮に見えるなぁ‥‥‥」

カゲロウ

「ふわあ‥‥‥って、何やってんだよ兄貴」
「もうすぐ、出発の時間だぜ?早く準備しねぇと、列車に遅れちまう」

フォルス

「そんなに焦るなって この街との名残を惜しんでるんだ」
「ほら、カゲロウもこっちに来なよ いい眺めだぞ?」

カゲロウ

「のんきだな、まったく これから遠くに行くってのに」
「ライル機関、つったっけ おいらたちを呼んでるってところは」
「これからの冥土の脅威に対抗するため、おいらたちの力を分析したいとか‥‥‥」

フォルス

「ああ、ロレイラル出身の研究者が大勢いるところらしいね」
「きっと、僕たちの力から、何かをつかんでくれるよ」

カゲロウ

「その後も、あちこちの組織を回んなきゃいけないんだよな?」

フォルス

「僕たちの力を必要としている人たちがいるなら行かないわけにはいかないからね」
「しばらくセイヴァールには戻ってこられそうにないかもな」
「だからこそ、今のうちに、この光景を思い切り眼に焼き付けておきたくてさ」

カゲロウ

「その気持ちは、とてもよくわかるんだけどよ‥‥‥」

フォルス

「不安かい?」

カゲロウ

「‥‥‥まあ、な おいらはこの街の外を、よく知らねえから」
「兄貴と一緒でもなけりゃ外に出る気にはならなかったさ」

フォルス

「頼りないこと言うなあ」

カゲロウ

「一緒だったら、どこにだって行くってことだぞ?」

フォルス

「それは頼もしい‥‥‥のかな?」
「頼もしいといえば、カゲロウ、ずいぶんと背が伸びたよな」

カゲロウ

「へへ、気づかなかったのか?もうすぐ、兄貴の背に追いつくぜ」

フォルス

「あはは、なんだかそのまま追い越されそうだ」

カゲロウ

「え? あー‥‥‥ 確かにそうだな」

フォルス

「ん、どうかしたか?」

カゲロウ

「いや、なんていうか、おいらが兄貴を追い越すってのが想像できなくてさ」
「追いつくところまでなら、さんざん夢にみたんだけどよ」

フォルス

「もしかしたら、誰かを追い越すってのは意識してやることじゃないのかもな」
「自分では一生懸命前に進んでいただけのつもりだったのに、気づいたら目標にしていた誰かを追い抜いていた‥‥‥」
「逆に、追い抜くことばかり考えていたら、いつまでも背中しか見えないのかもしれない」

カゲロウ

「‥‥‥兄貴‥‥‥」

フォルス

「でも、君の場合は、まだ早いね まだ僕は、カゲロウに負ける気はないから」

カゲロウ

「言ったな!そんなら、勝負しようじゃねえか!」
「駅までどっちが先に着くか、競争だ!」

フォルス

「よし、その勝負、受けて立つ!」

カゲロウ

 おいらがここにいるということ 生きて、考えて、動いているということ
 すべての始まりは、兄貴との出会いだった
 名前も、姿も、生命も、すべて兄貴にもらった
 あこがれて追いかけてきた だけど、それだけじゃ終わらないぜ
 肩を並べて歩いていける立派な男になってやる
 そう思えることが、とてもうれしいんだ
 兄貴‥‥‥おいらと出会ってくれて、ありがとう
 おいらを形作ってくれて、ありがとう
 おいらと一緒に歩んでくれて、ありがとう

 おいらと響きあってくれて、今、この時をくれて、本当にありがとう
 負けねえぜ!

  • 最終更新:2013-07-05 02:08:21

このWIKIを編集するにはパスワード入力が必要です

認証パスワード